大学院に進学して1年が過ぎた頃、
同期たちがインターンやら内定ゲットやら騒いでいたあの頃、
私は何もしていなかった。
博士課程に進学しようとしていたからだ。
理由は、就活が嫌すぎるから。
エントリーシートなんて、嘘まがいのこじつけだらけじゃないか。
ESや面接で人間のことなんか何にも解りゃしない。
馬鹿馬鹿しすぎる。アホくさすぎる。
こんなのやってられない。
そう思って、何もしていなかった。
比較的海外出張が多い研究をしていたこともあり、
このまま進学して研究しながらマイルを貯めるのも悪くない。
幸い、私の所属していた研究室は、修論発表が博士課程の院試を兼ねていた。
修論さえ書ければ自ずと進学させてもらえる。
ところが大学院生になる頃には「自分は何もできない」という現実を痛感していた。
課題に取り組む度に苦しみ、周りがスラスラと議論を進め、
次々にアイデアを出す中で私は何も思いつかず、
ただ指導教員の提案のまま動くだけ。
心の中ではずっと「これでいいのか?」と疑問を抱えていた。
最後の最後まで迷った挙句、卒業間際に進学辞退届を提出した。
博士課程に進学した直後から休学して頭を冷やすことも検討したし、
他人にも相談したが、あまりうまくいかずに諦めたのだった。
進学したとしても、私の頭ではアカデミアでは戦えない。研究は続けられない。
そう思った。
私に才能もセンスもないことなんて、本当はもっと前から気付いていた。
ただ自堕落に生きていただけだ。
自らエリートコースを手放した馬鹿だ。
私は結局、達成感も職も将来性も得ることなく、
一丁前に虚無感だけを得て大学院を卒業し、社会に放たれた。
意を決して半年就活をした後、ご縁があって地元の中小企業に入社することになった。
しかし、社会人になっても「無能な自分」は変わらない。